神奈川大学法学部
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学窓からの社会時評

上北 正人 准教授

  皆さんの財布を開けてみていただきたいのだが、様々なカードをお持ちではないだろうか。病院の診察券、定期券、身分証、免許証、ETCカード、スーパーや家電ショップのポイントカード、クレジットカードなどなど。あまりにカードが多すぎて、財布が閉まらないという経験をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。
  今日、ここでお話したいのは、スーパーや百貨店などのポイントカードである。こうしたいわゆるポイントカードは、店と客双方にとって一定のメリットがあるといえる。たとえば、客にとっては買い物をすればポイントがつき、それを貯めることによって、商品等と交換できる。店からすると、顧客のポイントを貯めたいという心理を利用して、お得様としてその店に引き止めておくことができるし、顧客の購買動向を把握することもできる。こうしたことから、多くのポイントカードが発行されているように思われる。さらに、このところ多いのが、ポイントカードにクレジット機能が付加されたものである。そうした場合、カードで商品を購入するなどすると、一定の割引を受けることができるなど、ますます利用者にとってはうれしいサービスが付加されているようである。
  そもそも、クレジットカードは、その名のとおり、クレジット(credit)=信用によって買い物することができるカードであるから、クレジットカードを利用すると、当然のことながら、後日請求されることになる。つまり、将来のツケで買い物するわけである。したがって、本来は将来の支払い能力つまり信用力を審査した上で発行されるはずのものである。

  しかし、最近、ポイントカードにクレジット機能が付加されたものがあまりに簡単に発行されることが多い(クレジット機能つきか否かの選択の余地はあるだろうが)。つまり、カードの発行を受ける人の信用力を調査せずに発行される。その結果、将来の支払い能力のない人にも発行される、あるいは、買い物をする際には支出がないために、ついつい買いすぎてしまい、結果として自らの支払い能力を超えてしまう、という事態を引き起こしてしまいかねない。
  さらに、キャッシング機能まで付いているポイントカード(クレジット機能付き)すらある。キャッシングといえば聞こえが、まさに借金である。この場合にも、その人の返済能力の見極めもしないで借金を認めることになり、結果として借金の返済が滞る人が出てくることは容易に予想がつく。

  実際、カード利用に伴う多重債務あるいは自己破産が大きな社会問題とされている。とりわけ、景気の悪化とそれに伴う雇用情勢の悪化、あるいは賃金のカットによって、さらに問題が大きくなるようにも思われるが、先に述べたような安易なクレジットカードの発行が、こうした問題の一因であるように思われる。
  こうした事態に対処するため、国は貸金業法の改正および割賦販売法の改正を進めてきており、来年の6月までに施行されることになる。それによると、貸金業者あるいはカード会社に対し、キャッシングを含めた借金およびカードの利用に際して、利用者の信用調査を義務付けるとともに、過剰貸付けを禁止する内容となっている。具体的には、1社からの借金では50万円、数社から借金している場合には100万円を基準として貸金業者は支払能力を調査しなければならず、同時に、借りる側も収入の3分の1までしか貸金業者からは借金できないとするものである。カードの利用に関しても、カード会社には支払能力を調査する義務が課せられている。さらに、専業主婦や学生など、定期的な収入がない人については、世帯主の信用力の調査を義務付けることになった。

  こうした法律の改正の方向性については、一定の評価がなされるべきであると考えている。もちろん、借金をする、カードを使って買い物をするというのは、その人の「自由」であるから、本来は法律によってそのような規制をかけるべきではないようにも思われる。しかし、同時に、これらは人間の欲求・欲望といった弱い部分に関わることでもあり、合理的な判断が期待できないことも経験的に知っている。したがって、カード利用に適しない人をカードの世界に入らないようにする、あるいは、利用できる額を制限するという、一種パターナルな介入もやむを得ないように思われるのである。

  しかし、幾つかの疑問がないわけではない。たとえば、過剰貸付の禁止に関する収入の3分の1までという規制だが、そもそも、なぜ3分の1なのか、さらに、はたして3分の1で十分な規制になるのかどうか。また、改正貸金業法には信用調査のための信用情報機関の指定が規定されているが、それがどのようなものであるのか。さらに、貸金業者は信用力を調査する際に多くの個人情報を扱うことになると思われるが、その管理をどのように規制するべきか、など考えるべき点は多く残されているように思われる。

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